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療育のこと

発語なしの6歳自閉症児がPECSに挑戦!始め方と習得するまで

発語なしの6歳自閉症児がPECSに挑戦!始め方と習得するまで

でこぼこ兄弟の長男は、知的障害アリの重度自閉症スペクトラム障害です。

7歳になった現在も発語が無く、6歳までクレーンなどで長男の要求に応じていましたが、2024年1月からPECSを利用して絵カードでコミュニケーションを取っています!

この記事では『PECSで長男が欲しいものを要求できるようになるまでの流れ』について、実例を元に紹介していきます!

PECSを始めようと思ったきっかけ

PECSを始めようと思ったきっかけは「3つ」あります。

PECSを始めようと思ったきっかけ
  1. 長男が意思疎通ができる人を増やしたい
  2. 伝わらないことで引き起こすパニックを減らしたい
  3. 視覚優位である長男ができることを増やしたい

長男が意思疎通ができる人を増やしたい

PECSを始めるまで、長男の意思行動で読み取ることしかできませんでした

長年通ってきた療育園の先生や家族には通じますが、それ以外の人には伝わりません

場所や人を問わずに、長男が自分の意思を伝えることができたら、この先支援者が変わっても、家族と離れても、コミュニケーションを取れるのではないだろうか?」と考え、PECSの利用を検討し始めました。

伝わらないことで引き起こすパニックを減らしたい

長男の欲しいものややりたいことが分からずに、パニックや癇癪が度々起きることがありました
例えば、冷蔵庫まで連れて行かれても、「ゼリーが欲しいのか?」「お茶が欲しいのか?」分からず、一つずつ実物を取って見せて確認していたのですが、長男の要望が分からず、癇癪になっていました。

視覚優位である長男ができることを増やしたい

言葉や指示が通らない反面、長男は視覚優位で、目に見たものは理解していました

「ご飯だよ」と伝えて振り向かなくても、ご飯が入ったお皿を見せると、走って食卓に来ていました。
そこで、「長男には絵カードが合っているでは?」と感じたのです。

PECSを息子がマスターするまで

1.始める前の下準備

・ブックの購入

私の周りにPECSをしている人はおらず、具体的な方法が分からないまま、とりあえず、公式サイトからブックを購入しました。

最初に私が購入したのは、PECS®スターターキット™プラスです。

※就学後、放課後デイサービスに持って行くことになったので、現在家では、中サイズのブックを利用しています。

・PECSの取り組み方を勉強する

購入したもののどのように始めたらいいのか分からず、公式サイトの無料資料やネット検索をして、流れについて勉強しました。

公式サイトでは、オンラインでのワークショップやセミナーを行っています。
また、無料の簡易的な資料もダウンロードができます。

本来であれば、オンラインでの授業を受けるべきでしたが、休みや時間をとることが難しく、とりあえず独学でやってみようと思いました。

まずは、公式サイトの資料を見ながら、フェイズⅠ~フェイズⅣまで取り組んでいくことにしました。

強化子を準備する

PECS絵カード
強化子とは?

好きな物や良い結果や充実感など。
好きな玩具や食べ物など。もらっても嬉しいもの。

長男にとっての強化子は、昔から大好物の「芋けんぴ」にしました!

芋けんぴを写真にプリントアウトし、上記写真のようにカード入れに入れたもの」と「PECSのブック用」の2種類用意しました。

2.実践!

準備ができたら、長男へのアプローチを開始です!

※フェイズⅠ

フェイズⅠでは、大人が2人必要です。
「長男とやりとりをする人」と、「絵カードを選択できるように長男の腕を持って促す人」です。

我が家は、「祖母=長男とやりとりをする人」「私=長男が絵カードを受け取るように誘導する人」になり、取り組みました。

まず、芋けんぴを長男の手の届かないところに置き、隠します。
芋けんぴを探し始めるような動き(クレーンなど)があったら、祖母が長男に絵カードを見せます。

はじめは絵カードを無視して、クレーンをして訴えてきます。
そこで私が長男の腕を持ち、祖母が出した絵カードを掴ませて、祖母に渡すように促します。

そして、祖母が長男に、芋けんぴをあげました。

長男!ここでやっと「芋けんぴ」ゲット!

欲しいものを手に入れた長男は、この作業を数回繰り返すことにより、芋けんぴカードを自ら持ってくるようになりました
毎日続けていたので、1週間もたたずに、自ら持ってくるようになりました

※フェイズⅡ:場所や人を問わず絵カードを渡す

フェイズⅠで使った絵カードを遠くにいる人のところに持って行ったり、いろんな人とやりとりする練習です。
長男は、すぐに祖父や私の元に芋けんぴの絵カードを持ってくるようになりました

めかぶ

芋けんぴの力すごいです・・・笑

※フェイズⅢ:2枚以上のカードから選択する

ブックに「芋けんぴ」と「野菜」のカードを並べ、「芋けんぴ」を選択できるようにしました。
2枚から1枚を選ぶ練習をして、徐々に数枚の絵カードから欲しいものを選ぶことができようになりました。
これも1週間くらいでマスターできました。

めかぶ

フェーズ1を習得するまでは時間がかかりましたが、その後はスムーズにできるようになりました!

※フェイズⅣ:文構成

「芋けんぴ」カード「ください」カードをPECSのボードに並べる練習です。

(↑よく利用している「欲しい」カードの汚くてすみません・・・笑)

現在「ください」しか利用していないため、「ください」カードは固定でボードについている状態です。
これだと、形容詞を広げることができないので、まだフェイズⅣについては達成できていません。

ちゃんと文字構成を意識させるために、フェイズⅣで文章を作ることを意識させなければならないと考えています。

放課後デイサービスでPECSを利用

家でPECSを始めてから4か月後、長男は小学校1年生になりました。

そして現在は、放課後デイサービスと学校でPECSを利用しています。

放課後デイサービスでPECSを取り入れることになったきっかけは、「絵カードを用いて意思表示ができるようになってほしい」ということを行動目標に入れたからです。

長男が通っている放課後デイサービスでは、数年前からPECSを積極的に取り入れており、長男は通い始める前からPECSを利用していたこともあり、すぐに利用できるようになりました。

放課後デイサービスでのPECSの利用に慣れ、家以外でも使えることを確認してから、秋から学校で利用を始めました

めかぶ

結果、PECSのブックを3冊購入しました!

現在は、大ブックを2冊(学校・放課後デイサービス)、中ブックを1冊(家)で使用しています。

放課後デイサービスでやっていること

放課後デイサービスで、長男がPECSや絵カードで意思表示しているのは、以下のようなものです。

  • お茶が飲みたい」→「お茶を飲む」カード+「ください」カード
  • トイレに行きたい」→「トイレ」カード+「ください」カード
  • おもちゃが欲しい」→「おもちゃの写真」カード+「ください」カード

「おもちゃ」や「お茶」などの要求をはじめ、家ではできなかった「トイレ」カードを持ってきて尿意を知らせてくれるようになりました!

放課後デイサービスで取り入れている「トイレ」カードは、PECSではなく大きめの絵カードだったので、同じものを作ってもらい、家でも取り入れたところ、排便を「トイレ」カードで知らせてくれるようになりました。(失敗もあります)

また、カードを使って要求した時は、要求したモノが渡されるまで「ビーズクッションに座って待つ」という取り組みもしているそうです。

長男の変化

PECSを使い始めたことで見られた長男の変化があります。

伝わらないことによる癇癪が減った

何が欲しいのか、を伝えることができるようになったことで、長男の要求にすぐに答えることができるようになり、伝わらないことによる癇癪が減りました

食べれるものが増えた

大好きなふりかけは「わかめ」しか使っていませんでしたが、「しそこんぶ」や「梅じそ」のふりかけカードを増やしてみたところ、「わかめ」以外のふりかけを食べれることが分かりました。

毎日「今日のふりかけはどれにする?」とPECSで聞いて、長男がPECSで答えてくれるようになりました。

食べ物だけではなく、やりたいことを伝えれるようになった

公園に連れていくときに「滑り台」や「ブランコ」の絵カードを見せて、「行く?」と聞くと
すぐに立ち上がって玄関に来ました。
その翌日、公園に行きたいときには「滑り台」「ください」とPECSで持ってきました
(「ください」ではなく「行く」を選べるように練習中です)

また、長男は、眠くて癇癪になることが多いのですが、本人は「眠い」ということを伝えることができませんでした。
そこで、夜ゴロゴロして眠そうなときに、寝る前にする「歯磨き」「うがい」「トイレ」「手洗い」「寝る」カードを見せてみて、「何がしたい?」と聞いたら、「手洗い」カードを持って手洗いに行き、「寝る」カードを持って私を寝室前まで連れていきました。

既にトイレまで終わっていたので、手洗いをしたら寝れると考えたのでしょう。
「寝る」カードを持ったのは初めてだったので驚きましたが、長男はカードの意味を分かっているのだと改めて実感しました。

長男の意思を知ることができて嬉しい・・・

これまでは長男が何が欲しいのか?何をしたいのか?分からず、クレーンで色んなところに連れていかれ、何を伝えたいのか分からないと癇癪になってしまい、家族も困っていました…。

PECSを取り入れてからは、「芋けんぴ」や「色鉛筆」など、欲しい物をカードで長男なりに伝えてくれます。

突然バナナを持ってきたときには「え!?バナナ食べたかったの!?」と驚くこともあります。

PECSは、長男にとっての言葉であり、私たち家族は、PECSを通じて長男と会話をしている気分になり、とても幸せを感じることができるようになりました。

今後の課題

PECSを通じて、長男の意思を知ることができました

今後の取り組みたいことは、以下の4点です!

今後PECSや絵カードを用いてやっていきたいこと
  1. 人とのコミュニケーションの要求についても絵カードで伝えれるようになる(「抱っこしてほしい」「遊んでほしい」)
  2. 「ください」だけではなく「行きたい」等の他の形容詞で文章を作れる
  3. 長男がクレーンで要求する様々な絵カードを作り、言葉を増やす
  4. 食事の時の要求に特化したメニュー表を作る

これからも長男との円滑なコミュニケーションを目指して、絵カードを利用していきたいと思っています!

まとめ

今回、PECSに取り組む前に、「おんぶ」や「だっこ」の絵カードを作ったことがありました。
当時は、長男が4歳くらいでしたが、絵カードに全く興味を示すことが無く、絵カードを使うことを辞めました。

強化子を意識していたなかったことや自己流で取り組んでしまったことで、長男に伝わらなかったのだと思います。

就学前の1月からPECSの絵カードコミュニケーションシステムの手順に沿って、フェイズⅠから取り組んだことろ、長男はすぐに絵カードを扱えるようになりました。

成長して、いろんなことを理解できるようになったこともあると思いますが、ちゃんとした手順に沿ってやることが重要なのだと認識できました。

10か月で、できるようになったこともありますが、まだ課題もたくさんあります。

これからも学校やデイサービスと連携しながらPECSを積極的に利用して、長男の「ことば」を増やしていきたいと思っています!

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